ウナギは私たちにたいへんなじみのある魚ですが、どこで卵を産むのか長い間謎でした。今から12年前、グアム島の西のマリアナ海域で1cmほどの生まれたての仔魚(レプトケパルス)をたくさん採ることに成功し、ウナギは日本から数千キロもはなれた南の海で卵を産むことが明らかになりました。
 これらの仔魚の耳石の輪を数えて誕生日を調べてみると、ウナギは月に一度の闇夜の晩に産卵することもわかりました。
マリアナ海域でたくさんとれたウナギ仔魚

一日に一本できる耳石の輪(電子顕微鏡写真)
これを数えると仔魚の誕生日がわかります。

 ウナギはその生涯のほとんどを川の中流から汽水域で過ごします。ウナギは川のエビやカニなどをたくさん食べて栄養を蓄え、遙か南の産卵場への旅の準備をしているのです。

川で生活しているウナギ

外洋の産卵場へ向かうウナギ
体は銀色に輝き、目と胸びれが大きくなる


 夏にマリアナ海域の海で生まれた卵は数日でかえり、ガラスのように透明で木の葉のような形をした仔魚(レプトケパルス)になります。親とはまったくちがう薄っぺらな形をしたレプトケパルスは海の流れに乗って、東アジアの川をめざします。まず、産卵場の近くに流れる北赤道海流に乗り、大きくなりながら西へ西へと流されていきます。そしてフィリピンの東の海で黒潮に乗り換え、姿を変えながら冬に東アジアの海にたどり着きます。
 今、自然の川に生きているウナギは減り続けています。3,000kmもある長い旅の最後に川の入り口にやってきたウナギの子供をやさしくむかえることができるように川の環境を良くすることが必要です。

ウナギの仲間(ハモ、ウツボ、アナゴ)の赤ちゃん

 
これらの仔魚は下の写真のように変身(変態/へんたい)して、親と同じ形の稚魚になります。

作成者  望岡典隆 もちおかのりたか (農学研究院動物資源科学部門)