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クワガタムシは鞘翅目、コガネムシ上科、クワガタムシ科に属する虫の総称です。コガネムシ上科には他にコガネムシ科やクロツヤムシ科などが含まれます。 実は、成虫の外部形態から見たクワガタムシ科の最大の特徴は、「雄の大アゴが発達する」点ではなく、「触角が第1節と2節の間で肘状に曲がり片状節が密着しない」点(図1)と、「見かけ上の腹板が5節からなる」という点(図2)にあります。しかし、実際にはマグソクワガタなど、クワガタムシ科に含めるべきか議論が絶えないものもあります。また、ツヤクワガタ属やヒラタクワガタ属のように、同種の雄の中に全く異なった形をした大アゴを具えた個体が現れる場合もあります。 クワガタムシ科の系統分類は、よりどころとされてきた成虫形態にこうした多様な変異が存在しているために、昔から統一した見解が得られず、非常に混乱してきました。 |
こうした現状にあって、最近、幼虫形態やDNAに基づく新しい方法による系統解析が試みられています。 クワガタムシの幼虫には雌雄差や個体差がほとんどなく、幼虫に注目すればその種の形態的な特徴を的確につかむことができます。幼虫形態の中では、大アゴや頭部の形態などの他、脚の発音器と腹部末端の毛群が特に有効と考えられます(図3)。 |
図4は16sリボソ-ムRNA遺伝子(左)と幼虫形態(右)に基づいて得られた日本産のクワガタムシの系統樹です。これらの系統樹は成虫形態に基づいて考えられてきた従来のクワガタムシ科の系統関係とは大きくことなっていますが、2つの樹形はよく一致しており、信頼性の高い系統樹であると考えられます。 |
ポスター担当 荒谷 邦雄 (Kunio ARAYA)(比較社会文化研究院 生物多様性分野・助教授) |