■起源論各説■

 日本人の起源をめぐる論争の歴史は古く、すでに江戸時代から、新井白石や木内石亭らによる著述が世に問われていた。本格的な研究は、幕末から明治始めにかけて来日した外国人研究者によって開始され、以後「日本人の起源」は、日本人類学会の最大の研究テーマとして、現在に至るまで熱い論争が続けられている。
 この間の研究をたどると、以下の4期に分けられる。

第一期(江戸時代末〜大正時代末)
 
人種交替説:先住民(石器時代人)と渡来人(金属器時代人)の交替
 プレ・アイヌ説(モース)、コロボックル説(坪井正五郎)
 アイヌ説(シーボルト、小金井良精)、固有日本人説(鳥居龍蔵)

第二期(昭和初年〜昭和30年ごろ)
 
原日本人説:縄文人は原日本人あるいは先史日本人
 混血説(清野謙次)―渡来人の影響を想定
 変形説(長谷部言人)―文化的影響で縄文人から弥生人へと変化

第三期(昭和30年代〜昭和50年代)
 
渡来説(金関丈夫)―地域を限定して渡来を認める
 小進化説(鈴木尚)―変形説を強化

第四期(昭和50年代〜)
 
渡来説が復活し、定着
 縄文人と渡来系弥生人の原卿が議論の焦点となる

[池田次郎・京大名誉教授(1997)による]

 とくに昭和30年代以降の研究進展には、金関丈夫、永井昌文らによって収集、保管されてきた、弥生人骨を柱とする九州大学の人骨資料が決定的な役割を果たした。現在もなお、国内はもとより海外からも多数の研究者が訪れ、多くの研究成果が発表され続けている。

〔展示中の人名は敬称を略させていただいています。〕


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