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自然生態系では多くの生物種が複雑にかかわりあって生きており、1種の植食性昆虫が大発生して、自分が餌とする植物を枯死させることはほとんどありません。大発生する前に、その植食性昆虫の天敵が、密度を抑えてくれます。一方、農業生態系には、単一の作物だけが栽培されており、系は非常に単純であります。また、栽培植物には生産性や栄養化を高めるために品種改良を施しています。このような品種改良は、一方で、野生植物が持っている植食性昆虫に対する抵抗性を弱めています。その結果、特定の植食性昆虫が大発生し、甚大な被害が生じることがあります。このような植食性昆虫を、「害虫」と呼んでいます。 |
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すべての昆虫に対し、その昆虫を餌や寄主として利用する天敵が存在します。これは害虫とて例外ではありません。例えば、アゲハの幼虫は柑橘類を食害しますが、大発生してミカンの木を枯らすことはありません。天敵は害虫が増えればそれに伴って増加し、餌や寄主となる害虫がいなくなれば減少します。また、天敵も自然の一部なので、天敵によって自然環境が悪影響を受けることはありません。このような天敵の力を利用し、化学農薬を使わずに害虫を防除する方法が生物的防除です。 |
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すでに紀元前から、天敵は害虫防除に利用されていました。しかし、害虫の生物的防除が本格的に注目を浴びたのは、カリフォルニアオレンジに壊滅的な被害を及ぼしていたイセリアカイガラムシの防除に、オーストラリアからベダリアテントウを導入し、大成功して以来です。今日では、他の地域から天敵を導入するだけでなく、大量増殖した天敵を野外や温室内に放飼したり、天敵が活動しやすいように環境を整えるなど、積極的に天敵の効果を高める方法が考案されています。 |
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柑橘類の大害虫イセリアカイガラムシは日本にも侵入しましたが、ベダリアテントウの導入後、たまにしか見かけないカイガラムシになりました。 |
ポスター担当 高木 正見 (Masami TAKAGI)(農学研究院 天敵昆虫学分野・教授) |