- ヒマラヤは気候にも大きな影響を与えています。
インド付近は夏季にはアラビア海からの南西の風が卓越し、大量の雨が降ります。インドモンスーンとよばれ、気象学的に非常に興味ある現象です。
このことにヒマラヤが強く関係しています。ヒマラヤは平均高度4000mを越え、その地表面は夏には日射を強く吸収します。そのため上空の空気が暖められ、回りから空気が吹き込んできます。南のインド洋には高気圧が存在し、そこから吹き込む風が湿
った南西の風となり、それがインド付近に大量の雨を降らせます。さらにこの風はヒマラヤにあたると強い上昇流となり、積乱雲を作ります。その時に出る凝結熱で大気はより暖められ、これが南西風をさらに強めます。これを模式的に描いたのが右の図です。
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- これを計算機の中で再現してみました(数値シミュレーションと言います)。下の左図は6月の総降水量と平均の風を示しています。カラーが降水量(mm/月)を表し、矢印の方向と長さがそれぞれ風向、風速(右下に10m/sの大きさ)を示します。南西風の強さと降水量の多さが確認できます。そこで今度は全陸地面を平坦として、どのように風が吹き、どのように雨が降るかを計算してみました。右図がその結果です。雨も風もずっと弱くなっていることが分かります。
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- ヒマラヤのある場合の6月の総降水量と平均風
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- ヒマラヤのない場合の6月の総降水量と平均風
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冬のシベリア高気圧についてもヒマラヤが関係しています。冬のシベリアには寒気、すなわち重い空気が蓄積し、高気圧が形成されます。しかしヒマラヤがなければ、寒気は、南の暖気と容易に交換し、それほど蓄積されません。右の図はその模式図です。
これも数値シミュレーションで確かめてみました。下の左図がヒマラヤがあるとき、右図がないときの1月平均の気圧と風です。ヒマラヤがあると、1040hPaを越える高気圧ができますが、ないと弱くて中心位置も異なることが分かります。 |
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- ヒマラヤのある場合の1月の平均気圧と風
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- ヒマラヤのない場合の1月の平均気圧と風
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