- 火山噴火が気候に及ぼす影響について
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- 火山の噴火が起こると、大気中に火山灰・塩酸・二酸化硫黄などを注入します。固体や液体成分は雨や雪によって比較的短い時間で大気中から除去されますが、気体成分の二酸化硫黄は大気中の水酸基と化学反応を起こして硫酸エアロソルを作り、下部成層圏に長い時間留まります。硫酸エアロソルは太陽入射を反射・吸収して太陽入射を減少させる日傘効果と、地球の赤外放射を吸収する温室効果によって気候に大きな影響を及ぼします。
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- ピナツボ火山の噴火
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- 1991年6月15日、フィリッピン・ルソン島のピナツボ火山は20世紀最大の噴火を起こし、成層圏中層から下層に多量の硫酸エアロソルを注入しました。噴火規模は、1883年のクラカタウの大噴火に匹敵するものでした(火山噴煙指数=1000)。
上図はピナツボ噴火後、硫酸エアロソルが全地球規模で拡がっていく様子を示しています(NASAの人工衛星観測による)。左上は噴火前(1991年4月10日から5月13日までの平均)、右上は噴火直後(6月15日から7月25日までの平均)、左下は噴火後3ヶ月(8月23日から9月30日までの平均)、右下は噴火後6ヶ月(12月5日から1992年1月16日までの平均)のエアロソル分布です。
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- 成層圏エアロソル密度の時間変化
- 上図は下部成層圏(地上約20km)における硫酸エアロソル密度の緯度・時間断面を示します。観測(SAGE�)は1984年11月から開始され、1996年10月まで継続されました。観測が開始された頃の高いエアロソル密度は1982年、メキシコ・エルチチョンの噴火の影響が残っているためです。硫酸エアロソル密度は1年でおよそ1/3に減少します。
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- ピナツボ噴火の北半球への影響
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- 上図は北緯30°〜北緯40°の緯度帯の温度偏差(1982年1月〜1990年12月の各月の平均値を基準として、各月の気温から差し引いた値)(橙色の曲線)と、その15ヶ月移動平均(短期変動成分を取り除いたもの)(赤色の曲線)、硫酸エアロソル密度(緑色の曲線)の時間変化を示します。横軸は時間軸(単位は月)で、原点は1982年1月です。硫酸エアロソル密度は、ピナツボ噴火直後から急速に増加して、1991年12月から1992年1月ころにかけて最大値に達し、その後、指数関数的に減少しました。一方、緯度帯で平均した気温偏差は噴火後1年目と2年目の夏に大きく低下しました(約-0.6℃)。
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