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XII.タングステン酸塩鉱物
156. 鉄マンガン重石
Wolframite
(Fe, Mn)WO
4
産地 茨城県高取鉱山/岐阜県恵比須鉱山/兵庫県明延鉱山/山口県重徳鉱山/
朝鮮金剛山
鉄マンガン重石の標本数は10余個に及ぶが,結晶の明らかなものはなく,{010}劈開面のみが認められる.
高取鉱山
産は黄銅鉱を主とする鉱石中に,15〜30mmの黒褐色の個体として含まれる.
金剛山
産
は緻密質石英中に黒褐色,柱状あるいは板状をなし,長さ15cmに達する. 劈開面{010}は強い光沢を示す.
157. 灰重石
Scheelite
CaWO
4
産地
山梨県駒ヶ岳
/京都府大谷鉱山/山口県喜和田鉱山/山口県於福鉱山/福岡県三の岳/宮崎県乙ヶ渕鉱山/朝鮮陵岩里
灰重石標本は20個以上にのぼる.結晶は両錐状であって,
p
(111)面を主とするものと
e
(101)面を主とするものとがある.
駒ケ岳
産
は黄褐色半透明で,(100)を双晶面とする双晶である.10cmに達する巨晶であって,結晶面は
p
面のみから成る.同産(9個)は淡緑黄色ないし無色透明,両錐状の美晶である.
p
を主面とするが,
e
面の発達しているものもある.大きさは8〜40mmである.
大谷鉱山
産は石英脈中の飴色,5〜8cmの個体であるが結晶面は判然としない.鉄マンガン重石の針状結晶を伴っている.
於福鉱山
産灰重石については
高(1901)
の記載があり,結晶最大のものは主軸長6cmに達すると報告されている.同産はざくろ石と共出しており,
c
軸方向10〜25mmの両錐状,白色・不透明の結晶である.晶相は
e
面を主とするが,
p
面および
s
(131)面なども認められる.同様の晶相を示し,やや緑色を帯びるものもある.
三の岳
産(5個)は黄銅鉱,黄鉄鉱方解石などと共出し,色および晶相の点で2種の灰重石が認められる.1つは
於福鉱山
産などと同様の白色,不透明,両錐状の結晶である.結晶面は
e
および
p
面から成るが,
e
面が顕著に発達している.大きさは
e
軸方向で約2cmである.いま1つは,表面部分は黒色不透明であるが,内部は無色ないし白色,半透明の結晶である,表面部分ではカルシウムは鉄に置換され,ライン鉱に類似した外観を呈するものと考えられる.晶相は
p
面が顕著に発達した両錐状結晶であり,
e
,
h
(313),
s
(131),
β
(113)などの微小面を伴っている.
c
軸方向に3cm程度のものの他,不完全ではあるが7cmに達するものもある.
乙ケ渕鉱山
産(2個)は淡黄色,半透明の扁平な両錐状結晶である.結晶面は
e
および
p
面から成り,
c
軸方向15〜20mmの大きさである.
陵岩里
産は淡褐色ないし黒褐色,不透明の両錐状結晶である.結晶面は
e
面または
p
面が発達しているが,単晶はなく
e
あるいは
p
を双晶面とする連晶である.大きさは
a
軸方向4〜8cm,
c
軸方向5〜8cmの巨晶である.
158. 銅重石
Cuprotungstite
Cu
2
WO
4
(OH)
2
産地
山口県於福鉱山
於福鉱山
産
の本鉱物について,
高 (1901)
は,灰重石および黄銅鉱の分解変質により生成された二次鉱物であって,灰重石の仮像であるとした.後に
HESS (1911)
は,銅重石と灰重石の混合物であると報告している.
於福鉱山
産銅重石は緑色,ガラス光沢を有する部分があり,灰重石と同様な両錐状の形態をなしている.
159. 鉄重石(ライン鉱)
Ferberite (reinite)
FeWO
4
産地
山梨県乙女鉱山
乙女鉱山
産
鉄重石は黒色,金属光沢を示す両錐状八面体結晶である.
p
(111)を主面とし極めて細い
e
(101)面も認められる.
a
軸方向約7cm,
c
軸方向約10cmの巨晶であるが,
p
面を共有する不完全な平行連晶を形成している.同産も同様の色および晶相を示すが,
e
面がやや発達している.
c
軸方向1〜3cmの粗晶である.
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