九州のドジョウ

  九州には純淡水魚類(一生を淡水域で生活する種)として42種・亜種が自然分布していますが、このうち9種・亜種はドジョウ科です。あまり大きい島ではない九州になぜこれほど多くのドジョウ科魚類が分布しているのでしょうか?その理由は九州の地史とドジョウ類の分布様式の特徴にあります。

 九州の北東部の河川は本州・四国の瀬戸内海側の河川とひとつながりになっていたことがあり、一方で、北西部の河川は中国大陸や朝鮮半島の河川と河口域を接していました。そのため、隣接していますがその魚類相成立の背景は全く異なり、分布する種類も異なります。

 また、ドジョウの仲間は好みの生息環境が種により大きく違うため、一つの河川内でも上流、中流、下流、そして付随する湿地でそれぞれ別の種が生息することができます。例えば福岡県の遠賀川水系では上流にイシドジョウ、中流にヤマトシマドジョウ、下流にオンガスジシマドジョウ、そして周辺の湿地にドジョウが生息しており、一水系に4種のドジョウ類が共存しています。

 地域による魚類相の違いと種による生息環境の違い。これが九州に多様なドジョウ類がみられる大きな理由です。

 

 

 

 

魚部が調べた イシドジョウ(九州産)の分布・生態

 

 1.イシドジョウとは?

 島根県や広島県の西部と山口県、そして九州では福岡県にのみ生息する。他種と比べて全長は5~7㎝ほどと小型で、山間の礫底の河川環境に生息する。その点で四国西部に生息するヒナイシドジョウと似るが、遺伝的には遠い関係にあるようだ。九州では福岡県北部の限られた水系の一部にのみ生息する。1991年に遠賀川水系で、1994年に紫川水系で、2000年に板櫃川水系で、2005年に城井川水系で確認された。
絶滅危惧ⅠB類(環境省)絶滅危惧ⅠA類(福岡県)。

 2.越冬の謎・・・冬でも見られる川があった!

 先行研究によればイシドジョウは「冬は川から姿を消す」とされる。本当にそうなのか?あるいは、九州でもそうなのか?その定説的な見解に疑問を持った高校生たちが、生息地3水系3カ所で冬季に比較調査をした。ある生息地では2年間にわたって冬季も川で姿を見ることができた。

 3.30mm未満は川で見かけない謎・・・20mmがいた!

  生まれた幼魚は30mm以上にならないと川で見られないというのが、他県産をもとにした先行研究の記述だった。実際に福岡県でも、そのサイズしか見たことがなかった。ところが、2010年4月にある生息河川の中流域を調査中、約20mmを最小サイズに30mm未満のイシドジョウが5個体、採集された。

 

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