方鉛鉱の標本は20個以上を数えるが,晶相はほとんどすべてがa
(100)面とo (111)面からなる.
倉谷鉱山産はa (100)面の単形で,面は腐食のため階段状に凹入し,にぶい鉛色の金属光沢を示す.径は5mm以下で,黄銅鉱と共出する.
葡萄鉱山産はa 面からなる立方体の晶相を有し,くすんだ鉛黒色の面の中央は階段状に凹んでいる.
尾去沢鉱山産は閃亜鉛鉱を伴い,a 面を主とし,小さなo 面を伴う.径は1cm以下で灰黒色,無光沢である.
神岡鉱山産はa 面を主とする径1cm前後の結晶の集合体であり,ときに小さなo 面を伴う.a
面からなる結晶が.(111)を双晶面とする貫入双晶をなすこともある.
阿仁鉱山産はa 面にo
面が伴い,径は2〜6mmである.ときに大部分が径1cm以下で,a 面とo の小面からなるが,o
面上に時々階段状に凹みを有するものがある.
足尾鉱山産は閃亜鉛鉱と共出し,a面と良く発達したo 面を持つ,径5〜10mmの結晶が集合しており,黄銅鉱を伴うa,o
面よりなる灰黒色,無光沢の2〜3cmに達する美晶が群生する大標本を含む.
太良鉱山産はa およびo 面がほとんど同等に発達し,径5〜6cmに達する結晶である.鉛灰色の結晶表面は金属光沢を有するが,ときに腐蝕して不平滑となっており,多数の円形の凹みが存在する.腐蝕のため,累帯構造が認められる場合がある. |