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II.硫化鉱物および砒化鉱物(2)

19. 針ニッケル鉱
Millerite NiS
産地 米国
米国針ニッケル鉱は金属光沢,真鍮色の長さ1cmに達する針状結晶で,放射状集合をなす.

20. 磁硫鉄鉱
Pyrrhotite Fe
1-xS
産地 栃木県足尾鉱山/長崎県佐須鉱山
足尾鉱山磁硫鉄鉱は金属光沢のある銅赤色を呈する.俗に茶硫といわれるものである.c (0001),m (10-10)面からなる,径1cm以下の6角板状結晶の集合体で,2〜3cmの球顆状をなす.
佐須鉱山産は,径約3cmの6角板状結晶の集合塊である.褐色味を帯びた銅赤色で,黄銅鉱を伴う.

21. 斑銅鉱
Bornite Cu
5FeS4
産地 兵庫県柿の木鉱山/兵庫県明延鉱山/産地不明
柿の木鉱山産斑銅鉱は,青色を帯びた銅赤色の繊密な塊状をなす.塊の長径は約20cmである.

22. 黄銅鉱
Chalcopyrite CuFeS
2
産地 秋田県阿仁鉱山/秋田県荒川鉱山/栃木県足尾鉱山/新潟県間瀬
黄銅鉱の標本は30個近くあるが,大部分が阿仁および足尾鉱山産である.
阿仁鉱山産は真鍮色で金属光沢があり,単晶はほとんどなく,耳附双晶が大部分である.複雑に耳附双晶をくり返すものもあり,径2cmに達する.一部はp (111)面からなる4面体で,結晶面はゆるい階段状をなし条線が多い.方鉛鉱を伴い,複雑な結晶が石英とともに群生している大標本を含む.
荒川鉱山産は,p p' (1-11)面で形成されている2〜3cmの大きさの3角式結晶で,m (110),e (101),z (201)の小面を伴う.m およびe 面ともに条線が発達し,p-p' の稜にm 面では平行に,e 面では斜交する.ときに,p-p' 面の稜方向に細く延びた3角針式結晶で,長さ1cm,径数mmである.p m e 面を主とし,c 面も認められ,c 面上に時々突起をもつことがある.
足尾鉱山は彎曲面よりなる3方錐状結晶の集合である.結晶の大きさは5cmに達し彎曲面は,p (111)とp' (1-11)の細かいくり返しよりなるため,条線が発達し,ビロード様に輝くものがある.また,彎曲面は凹凸著しく,面上に錐状または柱状の微晶が数多く認められる.足尾産黄銅鉱の形態については片山(1933b)の報告がある.

23. 黄錫鉱
Stannite Cu
2FeSnS4
産地 兵庫県生野鉱山
生野鉱山黄錫鉱は,銅鉱中の青銅色の繊密な塊状集合体であって,黄銅鉱,閃亜鉛鉱等と密雑している.

24. 黄鉄鉱
Pyrite FeS
2
産地 岩手県綱取鉱山/秋田県長木鉱山/秋田県花岡鉱山/栃木県足尾鉱山/新潟県間瀬鉱山/新潟県小岐鉱山/石川県尾小屋鉱山/島根県鵜峠鉱山/島根県鷺鉱山


黄鉄鉱標本はすべて淡真鍮黄色,全属光沢を有する結晶で,種々の晶相がある.
長木鉱山a (100)面の単形で,径は3cm前後である.
足尾鉱山産はa面からなる多数の個体が亜平行連晶をなし,結晶面は彎曲しており,曲面黄鉄鉱と称せられるものである.径2.5cmに達する.
鵜峠鉱山産はo (111)とa 面からなり,径5cmに達する.径6〜7cmに達し,o 面には3角形の成長丘が認められるものも存在する.
鷺鉱山産はoad 面を主とするものである.
綱取鉱山産はoad 面よりなり,径1cm程度の結晶で,e (210)の小面を伴う.n (211)面が認められるものもある.
尾小屋鉱山産は水晶と共出し,o 面を主とする径1cm前後の8面体の晶相を示し,a の小面を伴う.o 面には3角形の成長丘が認められる.a 面からなり,ときにo 面を伴う2cm以下の結晶も認められる.
間瀬鉱山産および花岡鉱山産はe 面からなる径1cm前後の5角12面体結晶が群生している.間瀬産ではときにa の細面を伴う.
小岐鉱山産には,a 面のみからなる径4cm程度の大きな結晶がある.ときにae 面からなる奇形が認められる.ae 面がつくる稜は不明瞭で,彎曲した面となっている.とくにa 面がe 面よりも良く発達している場合は,特色が著るしい.逆の場合は,a は小さく稜は明瞭に区別できる.この種の黄鉄鉱については比企(1894)の研究がある.

25. 方コバルト鉱
Skutterudite (Co, Ni)As
3-x
産地 朝鮮咸鏡北道会寧面郡八乙面
八乙面方コバルト鉱は,錫白色,金属光沢を示す繊密な集合体で,長石,石英を伴う.
Ni,Asの含有量によっていろいろな種名があるが,族名としての方コバルト鉱を採用した.

26. コバルト華
Erythrite Co
3As2O8・8H2O
産地 山口県長登鉱山
長登鉱山コバルト華は紫紅色,無艶,土状であって,灰鉄輝石,方解石,石英等からなる含コバルト鉱石の表面を薄くおおっている.

27. 輝コバルト鉱
Cobaltite CoAsS
産地 山口県長登鉱山
長登鉱山輝コバルト鉱は帯赤銀灰色で,部は桃色のコバルト華によっ
ておおわれ,黄銅鉱,灰鉄輝石等を伴う.1mm程度の微粒の集合体であ
るが.e (210)およびa (100)面の認められる結晶もある.

28. 白鉄鉱
Marcasite FeS
2
産地不明
白鉄鉱(産地不明)は淡黄色,金属光沢を有する2〜3mm程度の板状結晶が,径2〜3cmの球または楕円体状集合をなす.黄鉄鉱,石英,および燐灰石を伴っている.

29. 硫砒鉄鉱
Arsenopyrite Fe(As, S)
2
産地 栃木県足尾鉱山/山梨県金峰山/大分県尾平鉱山
硫砒鉄鉱の標本は約10個あり,いずれも鋼灰色,金属光沢を有する結晶である.晶相はm (110),c (001)面を主とする柱状のものと,m, c (014)面が発達する菱餅状のものとに大別される.
足尾鉱山産はm, c 面を主とする短柱状で,e (101)面を伴う.黄銅鉱と共出し,径5〜6mmである.
尾平鉱山m, c 面のほかに小さなe 面を持つが,c 軸方向に長く伸びた柱状結晶である.径は数mmであるが長さは10cmに及び,柱状細晶が平行に近い束状集合をしている.水晶を伴う柱状結晶が密生した大標本を含む.同産には,長柱状結晶に混じってc, e, m, a (100)面よりなる径3mm程度の扁平な結晶が認められる.a 面上にはb 軸に平行な条線が発達している.
金峰山産はm, c 面からなる結晶の集合であるが,大部分が(101)面を双晶面とする貫入双晶をなす.長径は1cm程度,c 面は不平滑で,彎曲している.
産地不明標本にはm, u からなり菱餅状の結晶が白色岩中に散在する.m 面は平滑で,金属光沢を持つが,u 面はa 軸に平行な条線を有し,彎曲している.

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