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V.酸化鉱物(2)

43. 黒銅鉱
Tenorite CuO
産地 秋田県荒川鉱山
荒川鉱山黒銅鉱は石英中に幅2〜3mmの脈状,あるいは径1.5〜2cmの斑点状をなす.大部分は黒色土状ないし塊状であるが,一部に結晶をなすものがある.黒色土状のものはmelaconiteと呼ばれる.塊状および結晶の部分は金属光沢を持つが,他は土状である.共生鉱物として,石英のほかに塊状の黄銅鉱が見られる.若林(1903)の報告がある.

44. 鋼玉(サファイア)
Corundum (Sapphire) Al
2O3
産地 岐阜県苗木/広島県勝光山/産地不明
鋼玉は4標本あり,いずれも青色系のもので,サファイアと呼ばれる種類である.
苗木産は,気成作用を受けた花崗岩中に錫石,トパーズ等と共出する.結晶はc (0001),a (11-20)面よりなる6角板状をなし,藍青色半透明である.藍青色の部分と淡青色の部分とがa 面に平行な帯状構造をなすものもある.径は最大15mmに達する.
勝光山産は葉鑞石中に藍青色,径1cm程度の果粒状をなして散点している.

45. 赤鉄鉱
Hematite Fe
2O3
産地 岩手県和賀仙人鉱山/岐阜県赤坂/宮崎県真幸/朝鮮利原鉱山/産地不明
和賀仙人鉱山産赤鉄鉱は鏡鉄鉱speculariteと呼ばれるもので,暗灰色,強い金属光沢を有する.λ (1,0,-1,16)を主面とし,m (10-10)面を伴った6角板状あるいは鱗状結晶の集合である.結晶は径1cm以下のものが多い.λ 面には水平条線が見られる.
真幸産は赤褐色ないし暗灰色を呈し,やや彎曲した薄い板状結晶の粗鬆な集合体である.一部は腎臓状を呈する.

46. チタン鉄鉱
Ilmenite FeTiO
3
産地 福岡県長垂/朝鮮/産地不明
朝鮮産チタン鉄鉱は,石英塊の表面に厚さ1mm以下の板状結晶の集合体をなす.鉄黒色不透明で金属光沢を有する.

47. 尖晶石(苦鉄尖晶石)
Spinel (ceylonite) (Mg, Fe)Al
2O4
産地 福岡県長垂

(テキストのみ)

長垂産尖晶石はペグマタイト中に赤褐色のざくろ石と共出している.濃緑色,半透明,ガラス光沢を示す正8面体の美晶である.結晶はo (111)面からなり,径6〜7mmのものが数個認められる.本標本については,高(1933)により鉄苦尖晶石と推定されている.

48. 磁鉄鉱
Magnetite Fe
3O4
産地 岩手県釜石鉱山/福岡県三の岳/長崎県大串村/大分県木浦鉱山

釜石鉱山産磁鉄鉱は,大部分が黒色不透明の塊状であるが,割れ目にはo (111)を主面とし,d (110)面を伴った径2〜5mmの結晶が見出される.共出鉱物にはざくろ石,水晶,灰鉄輝石等がある.
三の岳産はd 面を主とし,m (311),o の小面を有する黒色不透明の結晶集合体である.結晶の表面は虫食い状となっており,にぶい光沢を示す.径1〜3cmのものが多く,共出鉱物にはざくろ石,方解石等がある.
大串村は緑泥片岩中に散点する黒色不透明結晶で,o 面のみよりなる.結晶の大きさは径5mm程度である.
木浦鉱山d 面のみよりなる黒褐色,不透明結晶の集合体で,大きい結晶は径10cmに達する.結晶面には,長い対角線の方向に条線がある.

49. クロム鉄鉱
Chromite FeCr
2O4
産地 福岡県八木山/熊本県猫谷
八木山産クロム鉄鉱は,金属光沢を有する黒色ないし黒褐色の塊であるが,まれにo (111)面の結晶を示すものがある.
猫谷は黒褐色,亜金属光沢を有し,繊密な塊状をなす.塊の割れ目および表面に,エメラルド緑色,粒状のクロムざくろ石の集合体が密生している.

50. 錫石
Cassiterite SnO
2
産地 茨城県錫高野(スズコヤ)/岐阜県苗木/滋賀県田の上山/島根県馬の谷/大分県尾平鉱山
錫高野錫石は,m (110),z (321)面を主とする黒色,短柱状結晶が母岩の表面に群生している.接触双晶が多く見られ,結晶の大きさは数mmである.
田の上山産はカリ長石,石英,白雲母と共出し,2〜3mm程度の黒色短柱状結晶で,m (110),s (111)を主面とし,a (100)面を伴う.単晶はまれで,(011)を双晶面とする接触双晶や9連双晶をなすものが多い.
馬の谷産は石英,白雲母,カリ長石に伴う粒状集合体である.赤褐色ないし黒褐色で脂肪光沢を有する.

51. 金紅石
Rutile TiO
2
産地 徳島県眉山
眉山金紅石は,雲母片岩および石英脈中に,赤褐色柱状をなして含まれる.金属光沢を有し,{110}および{100}に明瞭な劈開がある.結晶面は明らかでない,巨晶であって,径1〜2cm,長さ4〜6cmに達する.

52. 鋭錐石
Anatase TiO
2
産地 鹿児島県神殿(ゴードン)
神殿鋭錐石はp (111)の単形であるが,まれにc (001)面を有する.結晶の大きさは1mm以下であるが,金属光沢強く,黒色で,p 面には水平条線が発達している.共生鉱物には金紅石,板チタン石等がある.

53. パイロルース鉱
Pyrolusite MnO
2
産地不明
パイロルース鉱(産地不明)は鋼灰色,金属光沢を呈し,繊維状結晶の放射状集合をなす.一見,しだ状であり,繊維の長さは3〜10cmである.

54. ダイアスポア
Diaspore HAlO
2
産地 岡山県三石/広島県勝光山
三石ダイアスポアは,白色ないし灰白色を呈する葉片の塊状集合であり,各個体の径は2〜3mmである.{010}に完全な劈開があり,劈開面は真珠光沢を示すが,他の面はガラス光沢を有する.
勝光山産には,無色透明ないし白色不透明で,5mmに達する6角短柱状あるいは6角板状の結晶が無数に認められる.デイッカイトの球穎を伴う.ダイアスポアの結晶はh (110),b (010),w (103),e (021)の諸面が発達し,k (130),s (111)の小面も認められる.またh 面およびk 面にはc 軸に平行な条線がw 面およびe 面にはa (100)面に平行な条線が認められる.なお,面指数は高根(1933)の構造解析の結果にもとづいた.

55. 針鉄鉱
Goethite HFeO
2
産地 朝鮮黄海道
黄海道針鉄鉱は,ぶどう状ないし腎臓状の塊で,放射繊維状構造をなし,表面は黒色,内部は黒褐色を呈する.大部分は無光沢であるが一部はガラス光沢を示す.繊維の長さは1〜2cmである.
従来褐鉄鉱と称された含水酸化鉄鉱の大部分は,微細な針鉄鉱を主成分とし,非晶質の水酸化鉄,鱗鉄鉱等を混えるものである.高標本の褐鉄鉱の多くは針鉄鉱と呼ぶ方が妥当であるかも知れないが,ここでは肉眼的に針状を呈するもののみを針鉄鉱とし,微晶質あるいは土状のものは褐鉄鉱とした.

56. 褐鉄鉱
Limonite 含水酸化鉄
産地 長野県武石村/愛知県高師原/島根県山佐村/長崎県彼杵鉱山/大分県尾平鉱山/鹿児島県青瀬/朝鮮黄海道/朝鮮金徳理/朝鮮下堅面/産地不明
武石村産褐鉄鉱は武石と呼ばれるもので,a (100)およびe (210)面の集形よりなる黄鉄鉱の外形を示している.褐色の,光沢ある径3〜10mmの仮晶で,凝灰岩中に散点している.
高師原産は高師小僧と呼ばれ,植物の根の周囲に厚い皮殻をなしている.管状で,表面には繊維状の模様が見える.径2〜3cm,長さ8cmである.なお高師小僧の成因については小藤(1895)の報告がある.
山佐村産は立方体の黄鉄鉱の原形を保ったまま褐鉄鉱に変質したもので,褐色ないし黒褐色,径2〜3cmである.
尾平鉱山産および青瀬産は,赤褐色ないし黒褐色で,a (100)面よりなる黄鉄鉱仮晶の集合体である.径は3〜5mmのものが普通である.
彼杵鉱山産は,黄褐色ないし褐色,土状を呈し,層状をなしている.表面は部分的に滑らかで,脂肪光沢を示すが,大部分は無光沢である.

57. 水マンガン鉱
Manganite MnO(OH)
産地 北海道美利加
美利加水マンガン鉱は,延長方向に平行な条線の発達した,長さ2〜5mmの柱状結晶の集合体であるが,一部に針状の結晶も見られる.c (001),d (210)面からなり,ときにm (110)面を有するが,c 面は発達不完全で多くの場合鋸状を呈す.暗灰色ないし黒色で,強い金属光沢を示す.

58. 硬マンガン鉱
Psilomelane (Ba, H
2O)2Mn5O10
産地 北海道美利加/長崎県高浜/朝鮮東菜
美利加産硬マンガン鉱は,黒色不透明で,ぶどう状の集塊をなしている.大部分は無光沢であるが,一部は光沢ある腎臓状の表面を有する.玉ねぎ状構造が見られるところもある.
高浜はしのぶ石dendriteといわれるもので,凝灰質岩石の表面に,黒色,無光沢の蘚状のしみ込みをなしている.同様のものは東菜産にも見られる.

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