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IX.燐酸塩鉱物および砒酸塩鉱物

137. ゼノタイム
Xenotime Y(PO
4)
産地 福島県石川山
石川山ゼノタイムは,黒褐色石英と黒雲母の接触部,とくに黒雲母中に点在する.淡褐色ないし灰褐色,半透明ないし不透明である.単結晶は少なく,放射状あるいは花弁状の集合(5〜10mm)をなす.花弁状集合のものは「菊花石」と呼ばれる.正方両錐形の8面体,すなわちz (111)面から成るが,微斜面を形成しているものも多い.

138. モナズ石
Monazite (Ce, La, Y, Th)PO
4
産地 福島県石川山/岐阜県吉ノ原/朝鮮稷山砂金地
石川山は,日本でも有数のモナズ石美晶の産地として知られており,その結晶形態については竹内・大森 (1935)の研究がある.石川山は,a (100),m (110),x (-101)を主面とする6角柱状,濃褐色,半透明の結晶(10余個)であって,長さ2cmに達するものもある.w (101),e (011),v (-111)の諸面を有するものもあり,またa' (-100)を接合面とする双晶,あるいはx面に微斜面を形成している結晶なども認められる.同産は長石中に,褐色,半透明の5mm以下の結晶が黒雲母と共出している.黒褐色石英中に含まれるものもある.吉ノ原産はペグマタイト(カリ長石,石英,角閃石)中に淡黄褐色,半透明で1cm以下の結晶が点在する.晶相は判然としないが,a m v 面が比較的よく発達している.
稷山砂金地産は「モナザイト砂」であって,褐色,半透明の0.5mm以下の粒状であり,円磨され,結晶面は明瞭でない.

139. 燐灰石
Apatite Ca
5(PO4)3(F, Cl, OH)
産地 栃木県足尾鉱山/埼玉県秩父鉱山/神奈川県玄倉/山梨県増富

足尾鉱山産の燐灰石については貴志 (1933)の形態的研究があり,標本は15個の多くを数えるが,晶相から次の4種に分けることができる.


(1) c (0001)とm (10-10)の面が顕著に発達する6角板状ないし短柱状結晶であって,稀にa (11-20)あるいはs (11-21)の微小面が認められる結晶.塊状緻密な黄銅鉱鉱石の表面に群生し,無色ないし白色の半透明結晶である.径3〜20mm,厚さ3〜8mmの美晶であり,m 面にはc 軸に平行な条線が認められる.
(2) c m 面およびr (10-12)面が発達する6角板状の結晶.黄銅鉱および閃亜鉛鉱から成る鉱石を被う1mm以下の鱗片状燐灰石の皮殻上に,径5〜15mm,厚さ1〜5mm,白濁不透明の結晶が群生している.
(3) c m s の諸面が明瞭に発達する6角板状の結晶.
(4) c およびm を主面とし,s およびx (10-11)面もよく発達するが,さらにr a y (20-21),n (31-41)などの微小面も認められる6角板状結晶.母岩(石英粗面岩)の晶洞中に生成したと考えられる.水晶を伴っており,径1〜2cm,厚さ1〜5mmの無色透明な板状結晶である.c およびm 面は顕著な光沢を有する.
秩父鉱山産は磁鉄鉱,灰鉄輝石,緑簾石などと共出しており,表面は白色不透明,内部は淡緑色半透明の6角柱状結晶である.m およびx を主面とし,a の小面を伴う.c 面は認められない.大きさは径4〜5mm,長さ8mmに達する.
玄倉(5個)は,表面は白色不透明であるが内部は淡緑色半透明の大きな柱状結晶であり,径4cm,長さ6cmに達する.柱面はa およびm 面から成り,a 面の方がよく発達している.端面はc およびx 面から成るが,x 面の発達がよく,c 面は小さい.
増富産は石英および雲母と共出している.晶癖は玄倉産と類似するが,c x m a の諸面がほぼ等大に発達している.大きさは径1〜2cm,長さ3cm程度であり,灰白色の不透明な結晶である.

140. 緑鉛鉱
Pyromorphite Pb
5(PO4)3Cl
産地 石川県尾小屋鉱山/岐阜県茂住/福岡県河東鉱山/大分県尾平鉱山
尾小屋鉱山産緑鉛鉱は淡褐色透明,ガラス光沢を有する細長い6角柱状結晶で,径0.1〜0.5mm,長さ2〜5mmである.結晶はm (10-10),x (10-11),c (0001)の諸面から成り,m 面はやや脹らみを持っている.
茂住は酸化鉱石の表面に淡緑色,半透明,径約1mm,長さ2mm以下の6角柱状結晶が群生し,大部分は球穎状集合をなしている.晶相は尾小屋鉱山産と類似しているが,x 面は見られず短柱状である.
河東鉱山産は,酸化鉱の表面に黄緑色の苔のような外観を呈しており,肉眼では結晶を判別しがたい.鏡下では0.1mm以下の淡黄緑色,透明ないし半透明の針状あるいは6角長柱状結晶が,放射状または不規則に集合している.
尾平鉱山産も茂住産と同様に,褐色の酸化鉱の表面に,淡黄緑色のガラス光沢を持つ長さ3mm以下の6角柱状結晶が群生している.晶相はm およびx 面から成るものと,m x c 面から成るものとがある.

141. 藍鉄鉱
Vivianite Fe
3(PO4)2・8H2O
産地 栃木県足尾鉱山/大分県姫島/熊本県金峰山
足尾鉱山藍鉄鉱は黄銅鉱を主とする鉱石の表面に,1〜5mmの多数の水晶に囲まれて成長した,1個の柱状(a 軸方向約10mm,b 軸方向約13mm,c 軸方向約30mm),藍黒色,不透明の結晶である.晶相はa (100),b (010),w (-101)を主面とし,m (110),v (-111),z (112)の微小面も認められる.またz およびz' の微小面が繰り返えされ,n (101)面に近似の小面を形成している.b (010)に平行な劈開が発達する.酸化鉱石の表面に無数に付着する藍黒色,半透明,1〜10mmの美晶を含む.8角柱状の晶癖を示すが,a ,b ,v ,w の諸面の発達状態は種々である.m ,z ,c (001),k (102),y (310),o (-103)などの微小面も認められる.
姫島産は径6cmの亜円礫状の標本である.藍黒色,不透明で,5mm以下の針状結晶が放射状あるいは不規則に集合し礫となったものであって,礫の表面は赤褐色である.
金峰山産は,灰色火山灰層中の植物化石の組織を置換した粒状藍鉄鉱である.とくに葉脈の部分を置換しており淡青色を呈する.

142. 葱臭石
Scorodite FeAsO
4・2H2O
産地 大分県木浦鉱山
木浦鉱山は葱臭石の産地として古くから著名であり,多くの研究がある.形態的研究はITOandSHIGA (1932)によって行なわれている.
木浦鉱山葱臭石は,硫砒鉄鉱および酸化鉄鉱から成る鉱石の割れ目に石英と共出している.多くは両錐状の数mmに達する結晶であり,稀に1cm以上のものも認められる.深緑色,透明,ガラス光沢を示す.p (111)を主面とする八面体であるが,c (001),d (120),g (011),n (201)面を伴う.とくに8面はほとんどすべての結晶に認められる.この他,稀にa (100),f (101),q (211),j (113),e (012)の諸面も見出される.p 面には(100)に平行な条線がよく発達し,q およびn 面にも条線を有することがある.

143. 燐銅ウラン鉱
Torbernite Cu(UO
2)2(PO4)2)・8-12H2O
産地 宮城県川張/福島県
川張産燐銅ウラン鉱は,赤褐色の,長石と鉄雲母の集合体において,主として長石の部分に燐灰ウラン鉱,ざくろ石とともに含まれる,緑黄色,透明の微細な板状結晶である.
福島県は長石の表面に,鉄雲母とともに散在する緑黄色,透明,弱い光沢を有する微細な薄板状結晶である.燐灰ウラン鉱を伴っている.

144. 燐灰ウラン鉱
Autunite Ca(UO
2)2(PO4)2・10-12H2O
産地 福岡県長垂/福岡県金武
長垂産燐灰ウラン鉱はざくろ石,白雲母,尖晶石などを含むペグマタイト中に,黄色の薄膜状をなしている.
金武は,花崗岩の表面に黄色の薄膜状をなしている.

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