概要
0/4 本研究の概略
本研究は、2006(平成18)年度から事前取り組みを始め、2007(平成19)年度から2008(平成20)年度に九州大学の学内競争的資金(P&P)の支援を受け実施されたものです。
1/4 本研究の目指すところ
本研究では、九州大学総合研究博物館のこれまでの活動経験にもとづき、大学博物館での活動や展示が、フィードバック可能な実践研究の場として非常に有効であると考えています。また、九大博物館が、他の大学博物館にはない特色を出すためにも、様々なユーザーに対応したインクルーシブな工夫が必要であると考えます。
本研究は、伊都キャンパスに九大博物館が建設され、移転後に展示等も本格始動すると思われる十数年後への布石となることを目指しています。それと同時に、大学にあるからこそできる、大学博物館として特色ある新規な役割をあぶり出し、新たな大学博物館モデルを探りたいと考えています。
2/4 本研究に至るまでの背景
九州大学総合研究博物館は創設以来、公開展示や特別展示などをとおして、九大の学術研究や資料・標本をわかりやすく広く一般に伝えるアウトリーチ活動(※)を実践してきています。
九大博物館は独自の建物を持っていないため、2002年度より、主に福岡市少年科学文化会館(以下、少科文)に会場を借用し、夏の公開展示を開催してきました。この少科文が、低年齢層(年長~小学生)のユーザーをターゲットにした施設であることから、我々が行う展示も、低年齢層向けに改善する必要があり
ました。九大博の構成員は、展示や博物館学の専門家ではありませんが、そのような実践を経て、低年齢層向けの様々なスキルを蓄積してきています。
その過程で、本研究代表者である三島は、大学博物館での展示が、フィードバック可能な実践研究の場として非常に有効である、という新たな役割を見いだしました。そこで2006年度に、三島と九大ユーザーサイエンス機構の清水が共同で、公開展示における現地調査や、共催企画における教育プログラムの実施を
試みました。また、当時ユーザーサイエンス機構を併任していた芸術工学研究院の平井の協力を得、博物館展示における補助ツールの試作やユーザー調査も行いました。その結果、そのような取り組みが重要であることを再認識し、本研究を立案するに至りました。
(※)狭義には、その施設(建物)の外での取り組みや活動のこと。
広義には、一般に向けた、取り組みや活動、働きかけのこと。
3/4 本研究の構成
本研究は、主に以下のような研究から構成されています:
- 九大博物館の展示や企画の会場における来館者調査
- 大学博物館における学びを助けるツールを開発します。
- 開発した学びの補助ツールを利用してもらい、かつ評価を行います。
- その教育効果や意義を分析し、ツールや展示の改良につなげます。
- 学内の教職員・学生向けのセミナーおよびワークショップの実施
- 本研究に関わる分野の動向を探り、また理解を深めます。
- 低年齢ユーザー等への配慮を含むインクルーシブなアプローチの重要性に関する啓蒙を促します。
- 学内教育へより貢献するために、研究組織構成教員が担当している授業とのリンクを試みます。(2008年度より)
- 同様に、学内におけるニーズをふまえた上で、博物館機能から抽出したより教育的・実践的なワークショップを実施します。(2008年度より)
- 国内外の博物館へのアンケート調査および訪問調査
- 国内外の大学博物館等の動向を明らかにするとともに、特色ある大学博物館のモデルを探ります。
- 実際のアウトリーチ活動に基づく調査
- 実際にアウトリーチ活動を行い、実施における問題点やニーズを調査・分析し、より有効なあり方を検討します。
4/4 本研究のその後
本研究はその後、機他大学博物館との連携教育の検討(2009年)、学内大学院教育への貢献(2009年度〜)、学内研究組織(リサーチコア)の発足(2010年度〜)、科学研究費補助金の支援による研究の発展(2010年度〜)などに結びついています。詳細は、九大博物館ウェブサイトをご覧下さい(準備中)。
ver.2 2011年5月11日更新