ざくろ石の標本は40個に及び,結晶面も良好な発達を示すものが多い.その形態は,d (110)面から成る斜方12面体型,n
(211)面から成る偏菱24面体型,およびn ,d 面ともに発達する集晶型に大別される.なお,ざくろ石は種々の固溶体を形成するが,灰礬ざくろ石と灰鉄ざくろ石は産状,色等がよく似ているので,肉眼的に区別することが困難である.ここでは次のように4つの系列にまとめた.
(a) 鉄礬ざくろ石
石川山産のざくろ石標本は10個を数え,その多くは,n
面から成る24面体結晶である.またまれに,d 面もかなり良く発達するものも認められる.結晶はいずれも黒色に近く,小さいもので径2cm,大きいものは径8cmに達する.
山の尾産は白雲母を伴い,ほぼ完全な偏菱24面体をなす.径1cm,黒褐色を呈する.
和田峠産には,安山岩中に径1cm以下の鮮かな赤褐色結晶が見える.n ,d 両面の集晶であるが,ときにd
面の発達が弱く,n 面を主としており,この場合n 面に明瞭な条線が認められる.
穴虫産は雲母安山岩およびその捕獲岩中に含まれていた結晶で,赤褐色を呈し,径1mm程度の粒状をなす.
(b) 灰礬ざくろ石および灰鉄ざくろ石
釜石鉱山産ざくろ石はn の小面を伴う12面体型結晶で,磁鉄鉱,緑簾石と共出する.
径1cm以下の赤褐色の小結晶である.
戸倉産はn ,s (321)の小面を伴う12面体型結晶で,大きさは最大径8cmに達する.結晶面はガラス光沢を有し,鮮かな赤褐色を呈する.
上保木産は典型的な斜方12面体型結晶である.大きさは最大径3cmに達し,暗緑褐色を呈する.
於福鉱山産は12面体型で,径5mm程度の褐色小結晶である.
三の岳産は珪灰石,方解石と共出する径2mm程度の褐色,12面体型小結晶である.
磁石山産は典型的な12面体型結晶で,径12cmに及ぶ褐色大結晶である.
柳浦産は典型的な偏菱24面体型結晶である.黒褐色で,最大径3cmに達し,結晶面に弱い条線が認められる.
尾平鉱山産は赤ないし黒褐色の12面体型結晶で,n の小面を伴う.径1〜1.5cm,d 面上に多数の菱形面が重って,いわゆるローズ形rosetteを呈し,平滑さを欠く場合がある.
木浦鉱山産はn 面を伴う12面体型結晶で,黒色を呈し,径は1cmに達する.
(c)満礬ざくろ石
小山田産および幡豆産の満礬ざくろ石は,ばら輝石と共出する黄褐色結晶で24面体型に属し,稀にd
の小面を伴う.いずれも径1〜1.5mmの小結晶である.
(d)クロムざくろ石
猫谷産クロムざくろ石は,クロム鉄鉱に伴う微粒の集合体をなし,鮮かなエメラルド緑色を呈する.
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