電気石には,鉄電気石schorl,マグネシウム電気石dravite,およびアルカリ電気石elbaiteを端成分とする固溶体系列が存在するが,ここでは高標本の従来の分類に従い,鉄電気石とリシア電気石に分けて記載する.
(a) 鉄電気石
鉄電気石は黒色を呈し,一般に黒電気石と称される.標本数は15個に及び,晶相は次の3つの型に分けられる.
(1) 長柱状結晶
石川山産はペグマタイト中の典型的な柱状結晶で,径5cm,長さ15cmに達する.柱面はa
(11-20)およびm (10-10)面が発達するが,深い条線を持つため,その断面は丸みをおびた9角形をなす.錐面ではr
(10-11)およびe (01-12)面がよく発達し,o (02-21)面の発達は弱い.面の組み合わせとしてはr
面のみ,r とe 面,r とo 面の3種がある.金峰山産,塩沢産,福吉産も石川山産と同様の産状,晶相で,径,長さがそれぞれ2.5,3.5cm;1.5,4cm;3,20cmの大きさである.
(2) 短柱状結晶
御所平産は,錐面rの大きな発達に比べ,柱面 m ,a が短く,短柱状ないし板状である.径5cm,長さ3cmである.
(3) 針状結晶
尾平鉱山産および薬王寺鉱山産はいずれも接触交代鉱床から産した針状結晶である.このうち尾平鉱山産は放射状集合をなし,長さ2.5cmに達する.
(b) リシア電気石
リシア電気石は青色,紅色等を呈し,それぞれ藍電気石indigolite,紅電気石rubelliteと称される.
長垂産は藍電気石で,濃青色の細い柱状結晶が放射状集合をなし,結晶の長さ3cmに達する.同産紅電気石で,リシア雲母を伴っているものもある.結晶は細い柱状で,放射状集合をなし,結晶は彎曲している.同産は径1.5cm,長さ3cmの柱状結晶であり,中央部は紅色,周辺部は緑色の累帯構造をなしている.
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