歴史的工作機械 植物

化石

Fossils

T

北海道のフィールドを調査中の故・松本達郎名誉教授(ご遺族のご厚意により掲載)。

異常巻アンモナイト:Eubostrychoceras densicostatum Matsumotoのホロタイプ.長径約20cm;北海道三笠市産;白亜紀後期(約8,500万年前)。巻貝とは逆に反時計回りに巻いている。

Cunningtoniceras asura (Matsumoto and Muramoto)のホロタイプ。直径約24cm;北海道中川町産;白亜紀後期(約9,500万年前)。長大なトゲを空間に突き出す様子が、三面六臂の阿修羅像(興福寺蔵)を想起させることから種小名(asura)がつけられた。

Mantelliceras japonicum Matsumoto, Muramoto and Takahashiのホロタイプ。直径約11cm;北海道三笠市産;白亜紀後期(約9,800万年前)。1980年5月8日、皇居内で行われた昭和天皇へのご進講に用いた標本。

P4の天覧標本のラベル。松本達郎の直筆で、標本番号や原記載論文のデータとともに「天覧」の2文字が鮮やかに朱記されている。

フズリナ化石:Yabeina pinguis Toriyamaの顕微鏡写真。山口県秋吉石灰岩産;ペルム紀中期(約2億6,500万年前)。

日ロ共同研究によるサハリン学術調査中、砂浜で身動きが取れなくなった調査隊の軍用四駆トラック。その後、ロシア陸軍の6輪駆動車の救援を受け、事なきを得た。

露頭から掘り出した直後のPachydiscus flexuosus Matsumoto。直径約27cm;ロシア共和国サハリン産;白亜紀末期(約7,000万年前)に北太平洋地域で最後まで生き残ったアンモナイトのひとつ。

「九州大学オール・アンモナイトプロジェクト」による収集化石の一例。右の黒い標本はジュラ紀前期シネムリアン期(約1億9,500万年前)の示準化石:Arietites bucklandi (Sowerby)。直径約27cm;ドイツ連邦共和国シュウェービッシェ・アルプ産。

現在、九州大学総合研究博物館には20万点以上の化石標本が保管されています。その起原は1939年の理学部地質学教室の開設に遡ります。爾来、B29による空襲や戦後の混乱の中で、先人達が黙々と続けた研究の成果が蓄積されました。国際動物命名規約で永久保管が義務づけられているタイプ標本等の「世界基準」が数多く含まれるのが特徴であり、2019年にそれらが博物館に集約された後も、閲覧のため国内外から多くの研究者が来訪しています。

中でも松本達郎の白亜紀アンモナイト化石コレクション約10,000点は白眉で、日本最多の115点のホロタイプや、皇居内に化石を持ち込んで昭和天皇へご進講した時の「天覧標本」などが含まれます。

他方、秋吉台など各地の古生代化石も豊富で、とりわけ鳥山隆三、勘米良亀齢、渡辺耕三らによるフズリナ化石の薄片(プレパラート)約16,000点は非常にユニークで、研究論文と併せ現在でも高い利用価値を有します。

2012年以降、これに現役教員の研究試料が加わりました。例えば戦後初のサハリン地質調査によって日本に持ち帰った白亜紀アンモナイト化石は,全体で重量約5トンに及びます。

さらに、2018年度に九大初のクラウドファンディング「九州大学オール・アンモナイトプロジェクト」を立上げ、研究・教育用に収集した世界各地の様々な時代のアンモナイト化石が新たに収蔵されています。

[敬称略]